光で色を紡ぐ。ステンドグラスの空間~彩光房・内本保夫さん

青森県弘前市で20年以上にわたり、ステンドグラス工房「彩光房」で数々の作品を作り出してきた内本保夫さん。去年の11月に自宅の二階をギャラリーとして開放し、200点以上の作品を展示しています。今回のインタビューでは、内本さんのギャラリーオープンまでの軌跡と作品作りに懸ける想いを聞いてみました。

ステンドグラスを作り始めたきっかけは何ですか?

もともと私はステンドグラスと関係のない別の仕事をしていたんです。それまでいろんな仕事をしていたんだけど、50歳になったタイミングで「ステンドグラスをやってみよう」と考えたんです。最初のころはカルチャーセンターでやっていたステンドグラス教室に通っていましたが、習うよりも自分でやってみたいという気持ちが強くなり、1年ほどで教室に通うのをやめました。それから自分で道具やガラスを集めて、独学でステンドグラスを作り始めました。

始めたばかりのころは、かなり大変だったのではないですか?

そうですね、大変でしたね。私が始めた20年くらい前は、ガラス1枚にしても、今のようにインターネットで購入なんかできなかったので、すでに教室や工房を開いているところから買うしかなかった。そういう場合、ガラスを売る工房側も、始めたばかりの私のような実績のない個人にはすんなりと売ってくれませんでした。「生徒さんは何人いるの?」「どこの先生に習っているの?」といった感じに芸術の世界にも派閥があって…。何件かあたって、ようやくガラスを売ってくれる工房に出会えたんです。

最初のころは、とにかく見様見真似で作品を作っていました。くずガラスを知り合いからもらってきてそれを針金やはんだでくっつけたり、透明なガラスに色付きのセロハンシートを張り付けたり。他の工房みたいに立派な道具などなかったので、工夫しながら作品作りをしていきました。そうして最初の作品を作ったんです。

内本さんが初めて制作した作品。野鳥ガイドブックの表紙をモチーフにしている。
透明なガラスにセロハンシートを張り付けて色ガラスのように見える工夫をしている。

工房の2階をギャラリーにした経緯について教えてください。

2階をギャラリーにしたのは去年の11月ですね。その頃ちょうど工房の2階の部屋が空いたので、それまで物置に保管していた作品を、せっかくだから飾ろうと思ったんです。それまでも何回かよそで会場を借りて展示会を開いていたんですけど、場所代もかかるし運搬が手間だし。それなら自宅でいつでも作品を展示していればいいかなと思ったんです。

工房2階のギャラリー。
大小さまざまな作品が並び、どれも見ごたえがある。
幻想的な光を放つスタンドランプ
窓から差し込む光が作品の美しさをより引き立てている
写真立てやアンティーク調の照明

弘前市にゆかりのある作品も多いですね。

そうなんです、ねぷたや青森銀行記念館、旧弘前市立図書館などの建物をモチーフにした作品も作りました。青森銀行記念館などの建物のステンドグラス作品については、たまたま図面が手に入ったから作ったんですよ。だから本物を忠実に再現していると思います。ステンドグラスを作っている人は私以外にもたくさんいるけれども、こういった立体の作品は珍しいと言われますね。このミニチュアを目当てに来店してくれる人もいます。

ねぷたのステンドグラスはかなり工夫して作りましたよ。本来であれば、顔や服などの細かい部分は絵付け(ガラスに塗料を塗って電気釜で焼き上げる手法)をするのが一般的です。でも私の工房には電気釜はなかったので、模様や色が入ったガラスを組み合わせたり、針金で細かい線を表現したりしてここまで作り上げました。立派な道具がない分、工夫や技法で作品作りをしています。

弘前市の歴史的建造物をミニチュアサイズで再現。
迫力のある弘前ねぷたも。

ギャラリーを開放してからは来店する人も増えましたか?

やっぱり増えましたね。ギャラリーを開いてからというよりは、そのあとにネット記事の取材が来てくれてから増えた感じがします。来店されたお客さんが「ネットの記事で紹介されているのを見て気になって」と言ってくれる人が多いです。それまでは県内でも弘前や周辺地域からのお客さんがメインだったけれども、最近は八戸や十和田など遠いところからも来てくれるようになりました。この間なんかは京都から来たっていうお客さんもいましたよ。

水槽の中を泳ぐ熱帯魚をイメージして作った作品。彩光房に入ってすぐの場所に飾られており、目を引く。

生徒は募集していますか?

今は募集していないですね。ギャラリーを開いてからも何人かステンドグラス作りを学びたいと言ってくる人は結構いたけれど、実際に習いに来たのは数人。その前から教えている生徒さんもいますよ。

私のところに習いに来る人には、道具やガラスはよそから買ったり集めたりしてもいいと伝えています。他の教室では、道具やガラスもその教室で売っているものしか使っちゃいけないなんて言っているところもあるけれど。たった1つの小さい作品を作るのにも、大きなガラス板を買わなきゃならないとなると、もったいないじゃないですか。それはあまり良くないと私は思うから、どうしても作品作りに必要だと生徒さんが言ったときだけ、必要な分のガラスを用意するんです。

あと、人に教えるからにはやっぱり本気で教えたい。いつまでも先生が付きっ切りだと、生徒さんのためにならないし成長につながらないですから。生徒さんにはちゃんと次までの宿題を与えて、技術を修得してもらって、独り立ちできるよう教えています。それが本当の先生の姿だと思いますよ。

これから何かで活躍したいと思っている方々へメッセージを送るとしたら、どんな言葉を送りますか?

これは芸術の分野に限らないけど、やっぱり一番の鍵になるのは「人との良い出会い」だと思います。素晴らしい技術やセンスを持った人はたくさんいるけれど、その人たちが全員世に知られているかといったら別の話。自分の持っているものを世に発信するには、それを認めてくれる人との出会いや縁が大事になりますね。出会いがあって、初めて自分の作品や技術を披露する場ができる。逆に言えば、どれだけ良いものを持っていても、良い出会いがなければ、なかなか認めてもらえないですね。

だから、動けるうちにとにかくいろんな人に会って、良い出会いを見つけにいくことをしてほしいなと思います。実際にいい縁に結びつかなかったり、その場限りの出会いで終わってしまうことがほとんどではあるけれども、まれに生涯続く良い縁や機会に恵まれますから。とにかく自分から動いていくことが大事だと思います。

彩光房を開いて20年以上作品作りを続けてきた内本さん。ステンドグラス制作の枠を超えてたくさんお話してくださいました。

あとは、何でもそうだけれど、初めからうまくいくなんてことはまず無いですよ。私もステンドグラス作りを始めたころは、とても作品とは言えないようなものを何個も作っていました。作っては改善して、また次の作品を作って…これの繰り返しでした。

最近だとなんでも学校や教室で1から教えてくれる世の中じゃないですか。その中で先生から学ぶことも大事だけれど、それ以上に「自分の頭で考えて、手を動かして、苦労して技術を磨く」経験が大切になると思います。先生から学ぶのは確かに成長スピードは早いかもしれないけれど、結局は先生の真似になってしまうから。自分の頭で考えてたくさん苦労して失敗する、その経験が自分だけの唯一無二の財産になります。なんでも試してみて、自分がこれだ!と思うものを探してみてください。


ステンドグラスギャラリー 彩光房

彩光房様では、ステンドグラスを使ったパネル、ランプ、その他さまざまなデザインの作品を製作しています。

ギャラリーに展示している作品のほかにも、オーダーメイド品も。

ガラスや工具の販売・壊れた作品の修理等もやっているとのことです。

作品の制作依頼・購入は、お電話にてお問い合わせください。

Facebookもやっていらっしゃるとのことなので、ぜひチェックしてみてください。

ステンドグラス 彩光房 | Hirosaki-shi Aomori | Facebook

℡.070-6617-5770

〒033-8051

青森県弘前市宮川2丁目17-1

定休日:不定休

入口のW.P.ローリー卿のステンドグラスが目印。ご来店前にお電話で予約してもらえるとスムーズですとのこと。

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